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イラクサの棘

第29章 こことは違う場所



酔い潰れて記憶すらない泥酔した状態
寝室での夫婦のセックス。

俺はちゃんと美也子を抱けてるのか?
無意識に潤の名前を呼んだりしてないのか?


記憶のない二日酔いの朝の気怠い目覚め
なのに、肉体はやけにすっきりしてるのに
傍で眠り込む美也子の身体に触れても
なんの感情も湧いてこない。

家族として
辛うじての情愛のキス
だけど、美也子はなんの不満も
言わないし、文句すら言われたこともない。


ゴミ箱の中には、処理したゴムの残骸
俺が嫁を抱いた証
もし、美也子から
2人目がほしいとか言われたりしたら
たぶん…俺は絶望感に捉われてしまう。


俺自身のしでかした身勝手さ
一方的に電話だけで別れを告げて
潤のことを捨てたくせに
失ってしまってから気づいたんだ。


なあ、潤
俺にはおまえがなにより愛しい

潤の声、笑顔、身体

いつまでも潤に囚われてる
俺は、潤のことが忘れられないんだ。





「智兄、ただいまぁ。
ごめんねー遅くなっちゃって。」

「とうちゃん、ただいまぁー」

「おう、おめえら遅かったな。
待ちくたびれたぞ、居眠りしてたわ。」

「じゃあそろそろお昼ご飯にする?」

「わーいおべんとだぁー」




こんなにも愛おしい家族なのに

さもしい自分の考えがひどく情けなくて
苦笑いするしかなかった。




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