イラクサの棘
第32章 兄と弟
「あれ?見たことあるかも?
もしかして…この人って
以前の病院に通ってた患者さんにいたかも」
さらさらの黒髪
人懐っこい瞳をしてるのに
その奥にどこか不安を抱えてそうな
質問には多弁に応えてくれたけど
自分からは敢えて話し出す素振りは
無かったんだよね。
睡眠薬の処方と
経過観察ってしばらく通院して
たけど、いつのまにか
来院が無くなって、俺もその病院はすぐに
退職したんだ。
「相葉雅紀さんだ!
そうそう、相葉ちゃんって呼ばれてますって
笑顔で自己紹介してくれたんだ。」
二宮和也
俺の兄さんが気にしてる人
もしかして兄さんの大切な人なのかな?
クスクスっ
じゃあ俺も大切にしてあげなきゃね
だって俺らは双子なんだから。
なんでも兄弟なら半分こだよね。
※ ※ ※
退屈でつまんないなぁって思って
駐車場に向かってた。
ずっと見てても
平凡な3人で、退屈そうにあくび
しながら釣り竿を垂らしてる青年。
無邪気な子どもの面倒を見てキャッキャ
はしゃいでる相葉ちゃん。
途中で迷子になっちゃった子どもを
探し回ってる相葉ちゃんは半べそ気味で
すっごく大変そうだっけど、
まあ、すぐに肩車してくれてた
カップルを見つけて子どもも無事だったし。
午後からは弁当広げて
楽しそうにランチをしてて
何処をどう見ても
週末の仲良し家族の光景だし
この3人がなにか大変なことに
巻き込まれるなんて想像できなかった。
まあ、別になにも起きなきゃそれはそれで
楽して報酬がもらえてラッキーなんだけどね。