イラクサの棘
第34章 訪問者
「ごめんね、心配かけちゃって。
大丈夫だよ?すっかり眠り込んじゃってて
すこし疲れたみた……ニノ?」
「俺には、ウソつくな。
大丈夫じゃないから、飯が食えてない
大丈夫じゃないから、携帯画面すら
確認できてないんだろ。」
「う…うん…うん…どうしよう…
ニノ……ふぇ…うぇ…智兄がぁ…
いっ、いなくなっちゃうよぉ…」
我慢してたのに
寝たら忘れるかもって思ってたのに
ニノの言葉で涙腺が崩壊しちゃう
智兄の言葉が
ずっとずっと頭の中で回ってる
「落ち着けっ雅紀、俺を見ろ!」
「…ぅ…ん……ニ、ノ?」
「大丈夫だ。
そんなのくだらないセリフ気にすんな。
個展が開催できたし、勉強がてら
海外にでも行きてぇとか思っただけだろう。」
「そっかなぁ…」
「きっとそうだよ。
そん時はおまえも一緒についていくって
言っとけば笑い飛ばしてくれるさ。」
「うん、うん、そうだね。
きっと俺の…考え過ぎだよね
ありがと、ニノ。
いっつもニノに助けてもらってるね。」
「アホか。
おまえが病気になったらいったい誰が
俺に美味い飯作るんだ?
ほら、もう寝てろ。
お粥作っててやるから、目が覚めたら
食べるんだぞ。」
「うん、クフフ。
じゃあ今度御礼に、新しいケーキ
作っちゃうね。」
「バーカ、俺はド定番がいいんだよ。
いつもの店いつもの味
いつもの雅紀、それがいいんだよ。」
「いつもの俺かぁ。
うん、じゃあ今日はゆっくり寝て
明日には元気になるね。」
「分かった分かったって。
コラっ、おまえなぁ馬鹿ぢからで
抱きついてくんなって!
ちゃんとゆっくり眠るんだぞ、雅紀。」
「うん。ありがとう、ニノ」