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イラクサの棘

第34章 訪問者

和也side



勝手知ったる雅紀んちのキッチン。
調理器具は整然をされてて、いつも
キレイに片付けてある。
お粥を炊いてる間に、
俊介が処方した睡眠薬を
雅紀のいつもの薬と差し替えてやる。

最近は睡眠薬もほとんど飲まなくて
すんでいたんだ。




今回の出来事は完全に俺のせいだ…


さりげなく漁港へ行くように話題をふると
素直な雅紀はその通りに行動した。

万が一、彼らが遭遇したときに
起こり得るかもしれない偶発的な出来事。
それを懸念して念の為、
俊介に尾行させていたのは正解だった。


あいつのことだから
法外な時間外手当を請求して来やがるだろう。



湯気があがる鍋にフタをしながら
苛立ちを隠せず舌打ちをしてしまった。


チッ!

ったくどこまで頼りない男なんだよっ
あいつを、雅紀を
どこまで悲しませりゃすむんだ?!


リビングに飾られている写真は
仲の良い家族のような1枚のショット。
無駄に爽やかな笑顔の男を睨みつける。

対峙したことのないその相手に
向かって悪態をついたところで無駄なだけ。



もし雅紀が地獄に落ちるなら
この爽やかな笑顔の男も
俺がこの手で同じ地獄へ突き落としてやる。

この世でダメならあの世の底の地獄で
2人が結ばれるように
このシナリオを俺が完結させてやる。



だから雅紀、おまえは安心して眠るんだ。


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