イラクサの棘
第34章 訪問者
「あの、ちょっと1時間くらい
出かけてきますんで、受付よろしく。」
潤からの連絡も気にはなってたが
雅紀からの連絡もメールも朝から来ない。
だから、
マンションまで様子を見に行くことにする。
雅紀の食べたそうなモノを考えながら
自転車のペダルを漕ぎだした。
雅紀のマンションの自転車置き場に
鍵をかけて停めておく。
途中とりあえず雅紀がよく差し入れてくれる
お気に入りのコンビニに立ち寄って
棚の新作のプリンとゼリーが目についた。
これなら雅紀も喜ぶだろう
あとは、お粥でも作ってやったらいいかな。
エレベーターホールで
降りてくるのを待っていると
到着した扉が開いて中から
帽子をま深く被った男が降りてきた。
俺とよく似た背格好でやや猫背気味な男。
「…チィッ…」
「あ、……すっすみません。」
耳元で聞こえあからさまな舌打ちに
おもわず謝りの言葉が口に出た。
けど、あれ?なんで
俺が謝んなきゃなんねぇんだ?
別に前に立ち塞がって、
邪魔してたわけじゃねえんだけど。
「ま、いっか。」
すれ違い様の出来事は忘れることにして
エレベーターに乗り込み
雅紀のフロアのボタンを押した。