イラクサの棘
第5章 Journey
実は契約書の封筒は先生の病室に置いてきてしまった。
大まかな日程表は携帯にデーターで
送ってもらってるし、チケットは全て翔さんが
預かっててくれてる。
着替えの衣類に、常備薬と、あとはランニングシューズ。
むこうでは車での移動が中心になるから
すこし大きめのカバンにしたんだけど
男のくせにって笑われるかもしれない。
なんて事を考えながら
待ち合わせの東京駅へ向かうと
俺よりも更にでかい旅行カバンを持ってる
翔さんが立っていた。
「デカくない?」
「うるせえ、何事も備えあればだよ。
これでも、先に現地に送ってある分もあるんだからな
ほら、行くぞ。」
「へ?ウソでしょ?
アハハっそれはすごいや。」
とまらない笑い。
笑いながら翔さんの後ろを小走りでついて行くと
来たことのないホーム
そこには初めて見る寝台列車が停車している。
「すごい、寝台列車なんて初めて。」
「そっか、列車に揺られて時間をかける旅も
いいもんだぜ。
さあ、予約してる個室はこっちの車両だな。」
そういえば海外でも列車の旅もしたことがあるって
言ってたんだ。
車掌さんに挨拶されながら
個室まで案内してもらえたのにはびっくりした。