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イラクサの棘

第5章 Journey


「ほらよ、潤どうした?」

「ホントにここでいいの?
すっごい豪華だよ、部屋間違ってない?」

「旅の始まりにそんなダサいことするかよ。
間違ってねえから、はやく入って。」

「う、うん。
スゴいね、寝台列車ってこんなに豪華なんだ」

「いやいや、ホントなら先頭車両の
スーパーハイグレードを予約したかったんだぜ。
けど、
あそこはさすがに人気でずっと予約が埋まっててさ。」

「まだ上のクラスがあるんだ?
この部屋で充分最高だよ!こんなすてきな
個室で列車の旅なんて俺には贅沢過ぎるかも。」

「ほら、荷物置いて飯行く準備して
一応ジャケットは着てかないとな。」

あらかじめ教えてもらってたので
上着の下はジャケットを着込んでいた。
首元から冷えを感じるとすぐに風邪をひくので
お気に入りのスカーフをしていくことにする。
 


「それって」

「あ、これ?先生に頂いたんだ。
一度着けてみたけど、
僕にはすこし派手なデザインだからって」

「フハっ、そっか相手は潤だったんだ。」

「え?もしかして翔さんが贈ったヤツ?」

「かわいい子にプレゼントしたからって
聞いてたからさ。
てっきり教え子の女子か、
お店のねえちゃんとかにあげたと思ってたわ。」

「なんか、ごめんね。
せっかく翔さんが先生にって選んだのに俺が使ってて。」

「なんで謝まるの?
気に入って使ってくれてる方が俺は嬉しいぜ。
それに潤のほうが良く似合うよ。」

「そっかな、あっ、ありがと翔さん。」



何気ないセリフのつもりだろうけど
翔さんの優しい眼差しで紡がれる声の響きは
ドキリとさせられる。
女性ならきっと好意を持ってしまうんだろな。 
いつだってさり気なく扉を開けてくれて
エスコートしてくれたりする仕草は
翔さんに普通に身に付いてる習性みたいなもの。



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