イラクサの棘
第5章 Journey
個室を出て
展望車、サロンカーのことを丁寧に説明しながら
食堂車まで翔さんが案内してくれた。
テーブルの上に置かれたステンドグラス製の照明
木の温かみがつたわる豪華な内装
銀製品のカトラリーが整然と並ぶ。
緊張しそうとつぶやくと、
大丈夫すぐになれるから平気だよと優しく
囁くように伝えてくれる。
翔さんは白シャツの上に襟付きの黒のジャケット。
着る物は基本、シンプルで機能性を重視するそうだ。
「潤はイタリアブランドも似合うかもな。
色鮮やかで派手なデザインとかも
おまえなら上手く着こなせそう。」
「翔さんこそ、イケメンなんだから
きっと派手でカッコいいデザインとかでも
着こなせるよ」
「うーん、俺はダメだわ。
着るもんに全く興味が持てねえんだよな。
ティーシャツにデニム
これが1番シンプルでラクだな。」
「それって以外と上級者だよ。
その人自体のスタイルとか着こなしとか
センスが判るし。」
「うそ!マジで?
センスねぇし、面倒だしもうこれでいいやって
思ってたんだけど。」
「翔さんは、スタイルいいし、イケメンだから
とりあえずなんとかなってたんじゃないかな。」
「マジかよ。
じゃあこんど潤に選んでもらおうかな。
お前のセンスなら俺のオシャレ度も爆上がりだぜ。」
彩り鮮やかな前菜
コンソメのスープは琥珀色をしていて
スーププレートの中で光り輝いている。
新鮮な魚介類のマリネに、仔牛のフィレステーキは
極上に柔らかくてソースの味わいも抜群に美味い。
車窓から見える風景は市街地をぬけて
暗闇の方に時折り遠くに街明かりが走り回っていく。
心地よい揺れについ勧められるままに
グラスに注がれるロゼを堪能していた。