イラクサの棘
第36章 報告
携帯のバイブ音に
気づいたおかげで潤のクッション攻撃を
ギリギリのところで回避できた。
「もしもし、俺。
ああ、ごめん。心配かけたね。
めっちゃ元気にしてる、あ、ちょっと待って…」
振り下ろしたクッションを
ギュッと抱き抱える潤にスマホを差し出す。
「……えっ?……誰?」
「おっさんだよ。
おまえの熱の具合が心配で電話くれたってさ。」
「えっ!!
おはようございます!先生っ!!」
※ ※ ※
潤side
「元気そうな声で安心したよ。」
おだやか口調、ゆっくりとした話し方。
旅を楽しんでいるかい?
その問いかけに何度もうなづきながら
つい大きな声で返事までしてまう。
「はい、とっても。
先生のおかげでこんな楽しくて
ステキな旅行ができて
本当に、ありがとうございます!」
「フフッそれなら、良かったよ。
この旅で潤が楽しく過ごせてるのが、
僕もなによりうれしいことだよ。」
「あの、俺、先生の病室に
今回の旅行の契約書を置いてきてしまって。」
「ああ、大丈夫だよ。
大切に金庫に入れてあるからね。」