イラクサの棘
第36章 報告
不思議だよな
そんな簡単に…行けるわけない
…俺には、絶対にむり。
そんな遠くの国の景色なんてみれないし、
行けやしない
この旅行が始まってすぐの頃の
潤の台詞を思い出した。
頑なだった潤の価値観がここまで変わって
きている。
お、鼻唄まで歌ってるじゃん
いいねぇ
そろそろ連絡してもいいだろう。
体調も落ち着いてきたし、
俺らの仲も思ってた以上に進展してる
なによりも潤の表情に
この旅行前には見えなかった、
未来への憧憬と、恋をしてる色気と艶が
うまれてきている。
だから、元恋人に会いに行く時には
この色気はなるべく消して行かないとな。
まあ、元恋人だったら
この変化には直ぐに気付くだろうけど…
「あのね、翔さん
もつひとつ、お願いがあるんだけど…」
この表情…ったく
本人は無自覚なんだろけど
俺のこと誘惑してきてるとしか思えねぇな。
「なんでも言えよ。
なんなら今すぐにでも潤のこと襲えるぞ。」
「も、バカッ違うってば!
今から電話するけど、
翔さんと一緒に会いに行くって伝えていい?
俺の恋人として翔さんを智に紹介したいんだ。」
「もちろん、よろこんで。
潤と一緒に会いに行くよ。
俺も、実は彼の個展作品観てみたいと思ってたし」
「ホント?いいの?
じゃあ2階で、智に電話してくるねっ」
コーヒーを飲み干しカップを注いで
2階へと向かった潤。
別に同じフロアで電話してても
俺は気にはしないんだが
潤なりの俺への気遣いなんだろう。