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イラクサの棘

第1章 プロローグ



階下のフロアへ移動
まだ待ち合わせ時間の10分前

あれから先生は
俺の言い訳や拒否を
やんわり退けて話題を変えてしまった。
  

「ったく、勝手な事ばっか。
俺の都合なんてちっとも聞いてもくれないし。」



ため息とともについ出てしまう独り言
自販機でいつもの商品のボタンを押す前に
目に止まる新商品があった。



「これってどんな味だろ?」


付近に誰もいない安心感で
いつもの癖の独り言が出てしまう。


ピッ!
ガシャン!!



「え?うそだろ?」

「はい、良かったらどうぞ。」

「……なんで?」

「悩んでたから君にぜひ味わって
もらおうかと思ってね。試しに飲んでみたら?」

「はあ?いりません!
けっこうです、見知らぬ人にそんな事…」

「あ、なら俺たちこれから知り合いになるし
お近づきのしるしにどうぞ。
俺は君と待ち合わせしてる相手だからさ」


軽いノリの口調
手渡される商品を受け取りながら顔を上げると
くっきりとしたおおきな瞳が印象的な
優しげな微笑みを浮かべる青年


「貴方が、先生が言ってた同行者?」

「そ、大正解。
初めまして、俺は櫻井翔です。
ソレ、けっこうな話題の商品でオススメのヤツ。」

「はあ、じゃあ、いただきます。
あの、俺はまだ別に行く気にもなってませんし、
それに同行者とか…その
俺は、誰かと一緒に行動するって苦手だから」



とりあえず座ろっかと背中を押されて
窓際のソファ席に促される
そつのないエスコートは手慣れた感じに思えた。


「ちなみに俺はカフェラテ。
コレもけっこう美味いんだよね。
少し甘めが疲れた時にはたまんない」




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