イラクサの棘
第5章 Journey
「そうだな、潤にはゴールドも似合うけど
ちょいイメージがなぁ、白もいいんだけど
その首元のピンク色も似合ってるけどなぁ。」
まじまじと俺を見つめて真顔で思案してる。
翔さんなら、何色が似合うのかな?
グラス片手にぼんやりと考えてると思わず
むせてしまう言葉が投げかけられた。
「やっぱ潤には紫だな。
うん、絶対紫色が似合うと思う。」
「……そっ、そっかな。」
一気に飲み干して、動揺しそうな気持ちを消し去る。
「貝紫ってさ、中世ヨーロッパ の貝の染め物で
帝王紫って色合いがあってさ。
それが潤に絶対に似合う色味だと思う。」
「そんな、豪華そうな色合いなんて
俺なんかに似合わないよ。
俺のことあんまり買い被らないで。」
「潤のこと知らないからこそだよ。
余計な情報が少ない分、印象でイメージが
浮かんだよ。
今度潤に似合う紫色のなにかを探すことにする。」
だったら紫芋の焼酎で充分だよって
冗談混じりに言うと豪快な笑い声で
周囲の注目を浴びてしまう翔さんがいた。
つい飲み過ぎてしまって
思った以上に饒舌になってる。
「そろそろデザートにするか?」
「うん、翔さんの話がたのし過ぎて
つい飲み過ぎちゃった。」
笑い合いながら名残惜しく最後の乾杯
季節のフルーツと、
リキュールのきいたベリーのソースが添えられた
アイスに芸術的作品にも見える美味しそうなタルト。
「お、潤と俺のとすこし違う?」
「ホントだ、翔さんのも美味しそう。」
「じゃあ。シェアする?」
「うん!」
翔さんの皿にはチョコレートのアイス
生チョコみたいな舌触り
味はほのかな苦味のビターで
すごく大人っぽい上品な味わい。