イラクサの棘
第40章 ルーツ
「それそれ、じいやに会いに来たのは
それなんだよ。
じいやに俺の恋人を紹介したくてな。
こいつは俺の恋人で、松本潤。
もちろん俺とおんなじ男だ。
だけど、潤は俺の生涯のパートナーだと
決めてるから、じいやにアレを金庫から出して
貰いたいと思って来たんだ。」
恋人で、生涯のパートナー
一切澱みなく言い切る翔さんの力強い台詞
紅茶のカップが…震えてる
翔さんの台詞に驚いた俺の手が震えているせいだ。
「大丈夫か?潤。」
「うっうん…うんうん。…だって
いきなり…なんだもん…」
「これはこれは、翔様、潤様
大変、おめでとうございます。
旦那様も奥様もきっと喜んでおられますよ。」
ほんの僅かだけ見開かれたじいやさんの瞳な
すぐにまた柔和な微笑みをつくってくれて
その眦にキラッと光が見えた気がした。
「まあな、
かなりファンキーな夫婦だったからな。」
だったって?
なんで過去形なの?
…って事は?
翔さんのご両親は飛行機事故で亡くなったそうで、
まだ中学生だった翔さんの
大叔父の先生が後見人となったそうだ。
「あの時は、本当にお坊ちゃまの
お辛い次期でございました。
なのにこの年寄りにまで心を砕いて
いただき、この別荘を残してくださったんです。」
「そりゃあここは、特別だからな。」
「はい、さようでございますね。」
懐かしいそうな眼差しで
壁にかけられた肖像画をながめてるじいやさん。
翔さんはご両親のどちらに似てるのかなぁ
なんて思いながら見てると
「あ、あれが俺の親父とおふくろ。
っていっても血の繋がりはない。
両親がこの別荘に来てる時、おふくろと親父が
散歩帰りにこの屋敷の敷地内で捨てられてる
俺を見つけて拾ってくれたんだ。」