イラクサの棘
第40章 ルーツ
翔さんのピアノ演奏に重なる旋律は
じいやさんが操作するレコード盤から。
翔さんのご両親がパリのダンスホールで踊ってた曲
レコードに合わせるようにピアノを奏でる翔さん。
「これが、おふくろが俺に子守唄に歌ってた曲。」
「ステキだね、ご両親の想い出の曲が
翔さんの子守唄になってて
その曲を、大きくなった翔さんのピアノ演奏で
お2人がダンスする。翔さんのご両親は
とってもしあわせだったんだろうね」
「そうか?
じゃあ、俺らも踊ってみるか?
ほら、手だせよ、潤。」
「だめだよ、俺、ダンスなんて踊れない…ぁ!」
ピアノから指を離した翔さんが
抱き寄せるように俺の腰に手を回してくれる。
レコードの美しいメロディ
ゆっくりとしたリズム
俺も翔さんに身体をくっつけるようにして
その動きに合わせるように委ねる。
「そう、上手にできてる。
俺の肩に手置いて、そうだよ。潤。
俺らもずっと2人で一緒にいような。」
「うんっうん…翔さん…ずっと一緒だよ。」
曲が終わると
拍手を送ってくれるじいやさん。
「とてもお似合いなお二人ですね。
それでは、
お坊ちゃまこちらに用意して参りますので
しばらくお待ちください。」
じいやさんが運んできた重厚なケースを
テーブルの上へ置く。
翔さんが取り出した鍵を差し込み
ケースが開くと
そこには
美しくきらめく輝きを放つ
ダイヤのネックレス
ダイヤのイヤリング
そして、品の良いデザインの指輪が2つ。