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イラクサの棘

第42章 勢揃い




足は震えてない?
ちゃんと笑えてた?
今、智兄は、どんな顔してるの?


「しっかり深呼吸しろ!
ほら大丈夫だから。
ゆっくり、そうゆっくりだ、そうだ。」


すぐ隣でニノが囁いてくれる。
うん大丈夫、俺は大丈夫…
だって…ニノが居てくれるんだもん。


背中が冷んやりしてるのに
脇と手のひらにイヤな汗が滲んできてる。






「…潤、よく来てくれたな。
遠くまでわざわざありがとうな。」

「いろいろあって…遅くなってごめん。
あの、先生から預かってたもの渡すね。」

「あっ、ああ…そうだったな。
あ、ちょっと待ってて」

こっそり振り返って見ると
外の札をひっくり返してクローズにしてる
今日はもうお客さんを入れないんだ。



「遠くからわざわざ来てくれたんだ。
貸し切りにしたからゆっくりと観て
行ってくれよな、潤っ」

「……翔さん…」

「いいんじゃない、せっかくの機会だし
俺も芸術作品をゆっくり観て回りたいし
しかも、製作者が直々に説明案内してくれる
なんて、こんな機会滅多にないだろ?」

「ん、わかった。
じゃあ、さきにこれを。はい先生から
預かってきたものです。どうぞ。」

智兄に手渡された封筒

「潤、熱は、体調はもう大丈夫なのか?」

「…ああ、うん。
翔さんに看病してもらったし、病院にも
連れて行ってもらったおかげで
直ぐ良くなったから。」

「…そっか…なら良かった。
えっと、あの、潤と一緒に旅行してるって
潤と仕事関係か、なにかの?」




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