イラクサの棘
第42章 勢揃い
あまりに平凡な男に見えた。
健康的な日焼けをしてて、やや猫背にも
見えるけど、細身のしなやかな身体つきを
している。
俺らを見つけて眠たげだった表情が
やわらいだのは、潤にたいして。
優し気にほほえむ顔には懐かしさ以上の
いとしさが溢れているように見える。
「潤、熱は、体調はもう大丈夫なのか?」
「…ああ、うん。
翔さんに看病してもらったし、病院にも
連れて行ってもらったおかげで
直ぐ良くなったから。」
淡々として抑揚のない潤の口調。
俺の腕の袖部分に掴んでる手が僅かに
震えていたから、腰に手を当ててやると
その震えは治まった。
「…そっか…なら良かった。
えっと、あの、潤と一緒に旅行してるって
潤と仕事関係か、なにかの?」
大野さんがようやく俺の事を認識したのは
潤がすこし困った表情で俺を見つめてきたから。
此処に来る前
ホテルでした潤との約束通りに
俺ら2人のことを話し出すことにする。
「はじめまして、俺は櫻井翔と言います
おっさん、いや教授の親戚でして
今回は、潤と2人で旅行しています。
俺はこの旅行で潤に恋に落ちて、好きだと
告白して
潤はいろいろ悩んで真剣に考えてくれました。
それでも、俺の気持ちを受け入れてくれて
俺らは恋人同士になり
昨日、俺は潤にプロポーズしました。」
ごく簡単な経緯、
ごく手短な説明、
この2週間足らずの2人の出来事と
俺たちの心情とその変化
より具体的なプロポーズと言う言葉で
ほんの付き合いたての同性カップルが
戯れごとや、軽いノリ等で恋愛をしているのでは
ない事を表現したつもりだ。