イラクサの棘
第5章 Journey
「どう?痛みはない?」
「うん、あっ翔さんの上着が…」
雑に羽織ってたせいでシワが出来てしまってる。
「大丈夫だよ、ほらもっとよく見せて。
まだすこし赤いな」
ベッドに座る俺の太腿に氷水の入った袋をそっと
あてて冷やしてくれながら
翔さんの指先が撫でるように触れてくる。
「ここ、これは?痛くない?」
「うん、痛みはないよ。
ありがとう、あとは自分でできるから。
翔さんも着替えてよ。」
以外にもしっかり鍛えてある腕の筋肉
フラつく事もなくあんな風にしっかり
抱き抱えて俺をここまで連れてきてくれた。
男の俺が人前で
あんな風にお姫様抱っこされるなんて
思い出すと、耳元から熱が帯びてきてしまう。
袋の中の氷はだいぶ解けてしまってるけど
まだ水は冷たいまま。
頬に当てるとひんやりとして心地よい。
「熱あるの?」
「ううん、すこし酔ったみたいだから。
翔さんって、すごく心配症だね。
ってか彼女とかにもそんなに過保護なの?」
「とりあえず心配事ははやめに対処して
つぶしておきたい方だな。
恋人はいない、いまはフリーだよ。
過保護じゃなくて、これは責任だな。」
「責任感ってこと?」
「潤のこと任せてられてんだそ?
ちゃんと契約書にサインも押印だってさせただろ?
この旅の最中に潤になにかあってみろよ」
「あんなの、形式的なものだと思ってた。
それに、さっきのあれは偶発的に起きたんだし
翔さんの責任でも、なんでもないよ。」