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イラクサの棘

第6章 ユメウツツ



「すごく美味しいっ。」

「マジでうんめえな、このトマトスープ!」

「違うよ、これはミネストローネって言うスープ。
いろんな野菜がたくさん入ってる
イタリアのスープだよ。」

「トマトも入ってるよな?
だったらトマトスープみたいなもんだろ。」

「フフっおおきな括りでだけどね。」



薬で治ってきた頭痛

驚くほど程に身体は軽くて
翔さんのぬくもりのおかげでぐっすり眠れたんだ。
太もものヤケドした部分も
痛みもなく腫れにもなってなく
うっすら赤みがさす程度になってた。


「翔さんのおかげでヤケドも
ひどくならなかったし。ありがとね。」    

「ホント良かったよ。旅のはじまりの
思わぬハプニングだったからな。
あ、降りる前にまた薬塗っておかないとな。」



流れる車窓はおだやかな海沿いの街の風景

食欲は無いと思ってたけど、
美味しいスープで胃が刺激されたせいか
生野菜のサラダと、ヨーグルトの
フルーツ添えまで食べてしまった。

それと目の前の食欲旺盛な翔さんのおかげかな。


ハッシュドポテトとベーコンは
俺の分まで食べてくれたし
焼きたてのブレッドはおかわりまでして
こんな風に目の前で美味しそうに
食べるところを見てると、こっちまで
つい笑顔になるから。

「唇の横、ついてるよ。」

「ん?どっち?ここか?」

「違うよ、ほらここ。」

大の大人で野郎2人が
向き合ってなにやってんだろ。
可笑しくなって眼鏡を外して笑い転げてしまう。  


なんかもう
翔さんには肩の力をぬいた素のままの自分でも
いいんだって思えてきたら
はじめて踏み入れる北の大地の2人旅が
楽しみになってきた。

コーヒーは遠慮して
ゆっくりとした足取りで部屋に向かう。

途中で昨日のご夫婦に声をかけられて
少し立ち話をしながら
ヤケドは大した事にはならなかったと
告げると安心した様子の微笑みでご夫婦が
お互いを見つめ合う。



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