イラクサの棘
第6章 ユメウツツ
「ゆっくり周遊されるなら
ぜひともわたしたちのホテルに立ち寄って
くださいね。」
「ありがとうございます。
じゃあ、時間つくって立ち寄るようにしますね」
「もう翔さん、そんなの悪いよ!」
「いえいえ、おふたりで来てくださるのを
心から楽しみにおまちしておりますわ。」
「はい。では、また。」
「あ、では失礼します。」
小声であんなの社交辞令だよって言うと
キョトンしたおおきな瞳で
そんなことは分かってるよと平然とした口調。
「ここからは自分の裁量と力量だろ?
ただの偶然起きた事故で終わらせるのか
縁として違うステージを拡げてくのか。」
「拡げてってどうするの?」
「さあな、先のことなんてわかんねぇ
ただ、きっかけとして、幅が拡がれば
更に豊かな生き方になるだろうって
俺の持論だからな。
特に人脈の拡がりは
思いがけない発見、発想が手に入れられる
チャンスだぜ。」
自分とはまるで真逆の発想
だからこそ
翔さんと一緒にいることが新鮮で有意義で
楽しいって感じるのだろう。
部屋に戻り荷物をまとめて
降車の支度中
手にした薬缶を塗ってやるからって
言われて促されるようにソファーへ。
ゆったりとしたシャツだから下着は見えない筈。
うっすらとほのかな赤みかがる皮膚の
箇所に優しい仕草で塗り込められる軟骨。
「よかった、これなら傷痕にも残らないだろな。」
「うん、ありがとね。」
「一生傷痕が残っちまったらどうしようって
あの時はマジで正直焦った。」
「大げさだよ、
男なんだし、こんな足のヤケドくらい…」