イラクサの棘
第6章 ユメウツツ
たかが一度の失恋
俺にとって生涯ただ1人、運命の相手との巡り合わせ。
そう信じぬいてたから
絶望の淵から這い出す事は
簡単じゃなくて、今もまだ踠き苦しんでる。
「それは翔さんにとってはでしょ?
俺にとっての恋愛は…辛い事のほうが…多かった
だからもう恋愛はしない。
それにもう、出来ないんだよ…
情けないけど、俺、不能なんだ、勃たないの。
だから男としての肉体は出来損の欠陥品って
事になるしっ。」
「………………潤………」
ここは驚いたり、同情するところで
大抵の人は安っぽい慰めの台詞なんかで
俺を励まそうする。
ほら、翔さんだって
言葉を失っちゃってるじゃないか。
昨日の醜態のこともあるし、こんな事は
早めに告げとかなきゃ。
今朝起き抜けの健康的な翔さんの裸体が
ひどくまぶしく見えたのは
俺の中の男としての羨望と
夢の中、
失ったあの頃への憧憬があったのかもしれない。
まだ20代なのに
いわゆるED、勃起不全なんて
きっとこれは
俺が背負うべく罪であり与えたられた罰。
顔に歪んだ笑みが浮かぶ。
なのに同情でもなく
はっきりとした口調で、真っ直ぐ見つめて
訊ねてきた翔さんにこっちが戸惑ってしまう。
「それってさ、肉体的機能の問題?
それとも心理的要因なの
医者にはどう診断されてるんだ?」
「えっ?いや、あの別に診断って程
病院で調べて貰ったりは…してないけど。
でも、過去に、その誘われた機会があった時も
全く役に立たなくて、
朝だって、今朝の…翔さんみたいに健康的には
反応も、しないから…」
「そっか、治療した結果とか、
きちんとした診断結果が
あるわけじゃないんだな?
あくまでも潤の個人的な見解って事なんだ。」
俺の身体なんだから
自分の事は俺自身が一番分かってる!!
そんな思いが強く込み上げてきて
睨みつけるような眼差しで
翔さんを見つめていたらしく、
落ち着けよって
立ち上がる翔さんに頭を撫でられた。