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イラクサの棘

第7章 記念写真


翔side



「もう、知らないっ!
俺、むこうで土産見てくるからね!」

走り去る背中にウィンクしてやりたくなる。
すこしだけ色づく頬に捨て台詞
照れ隠しの表現は
ホントにかわいいやつだと思う。

この5日間でかなりの距離感は縮まった。
あのダイニングカーでのハプニングも
物語のプロローグの演出としては
悪くなかったし
土壇場でのシナリオの変更も
それはそれでより深みの有るものに
仕上がってゆく筈。

何事もにも臨機応変に柔軟に
慌てることも焦ることもせずだ。


「ん?うそだろ、ヤバっ……」

このコールには出なきゃマズいだろう
けど、一体誰が?



「……久しぶりだな、バーンビ」

「…うっす、岡田先輩。お久しぶりです。」

「おまえ、こっち来てんだろ?
なんで連絡してこねぇんだ?
まさか俺のことスルーするつもりじゃあ?」


ヤバっ絶対絶滅?
いや待て待てっ…打つ手はある筈だ
落ち着けっ考えを巡らせろ。



「いや、連絡はしようと思ってたんです
ただ、今回は連れが一緒なもんで。」

「ほお、おまえにもやっと一緒に旅する
恋人ができたのか?」

「違いますよ、ってか、まだ未満で
なんにも進展させて無いので。」

「ほお、珍しいな、速攻で手を出して
速攻で別れる主義のバンビが?」

「岡田先輩、俺のそのろくでなし時代を
そろそろ上書きしてもらえません?」

「やだね、それなら俺んところに寄って
どう変わったのかちゃんと証明してみせろよ
なあ、バーンビ!」

腕っぷしの強さでは
絶対に勝てない岡田先輩。
牧場経営、武道家でそれに猟師って経歴、肩書きは
どうにも厄介過ぎるだろ?

「わかりました、じゃあ今から
そっちに向かいますんで、
すこし協力してもらいますよ?」


「いいね、かわいいバンビの協力なら
なんだってしてやるぞ。」

「そのバンビ呼びも、
いい加減やめてほしいんですけどね。」



土産をあれこれ探し回る潤の姿を見つけてから
立ち止まり、岡田先輩に小声で頼み事する。


さあ、このシナリオ変更が
吉と出るか?凶と出るか?

いや、絶対、凶にはさせないけどな。




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