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イラクサの棘

第8章 温泉




旅の1日目の夜明けはカーテン越しの陽光を
瞼に感じながら。
レンタカーで見るはじめての風景は、
どこか見慣れない街の違和感を感じながらの景色。
手慣れた様子でナビを操作して安全運転で
車を走らせてくれてた。

海岸線を走らせながらの旅
気になる看板の店に途中立ち寄ってみたり
目的地としてセットしたお店が
思わぬ休暇中だったり。

和風の旅館だけど
宿泊予約してくれてる部屋は
どれも寝室は別にある
デラックスなベッドがあるツインタイプ。

あの日以来
酒はあまり飲み過ぎないようにしてて
ちゃんと自分の意思でベッドに入ってた。

俺は朝は苦手だから大抵翔さんが先に
起きてて声をかけて起こしてくれる。

智とはまったく質感の違う声の響きなのに
とても耳触りが心地良くて
寝惚けてるとそのまま腕を伸ばして
抱き着いてしまいたくなる。

「これってなんだか
センチメンタルジャーニー?」

自分だけだと馬鹿げて単純に笑えるけど
翔さんを巻き込んじゃうのは
うん、やっぱり失礼だよなぁ。

でも、たぶん
翔さんなら笑い飛ばしてくれるよね。

センチメンタルでもなんでも、
旅は出会いと見聞が拡がっていいぞ!!
とかなんて言ってね。




すっかり長湯をして身体もぽかぽかになり
言われ通りにしっかり髪も乾かした。

「すみません、遅くなりました。」

「おう、どうだ温泉気に入ってくれたか?」

「はい、とっても気持ち良くて
肌もつるつるだし身体の芯からぽかぽかしてます。」

「朝風呂でも、深夜でも
源泉かけ流しだからいつでも入浴できるぞ。」



「ありがとうございます。
あれ?翔さんは?」

「ああ、ちょっと頼んだ事をな
もうすぐ終わる頃だろ?」

窓の外を指差して
デッキの向こうに見えるのはヨロヨロに
なりながら薪割りをしてる姿の翔さん。

「あいつ要領が悪いんだよなぁ。」

「フフッじゃあ俺も手作ってきますね。」





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