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イラクサの棘

第8章 温泉



「じゃあ翔さんが起きれなくなったら
俺が看病してあげようかな。」

「お、なら悪くねえかも。」



こんな風に軽口を言い合えるような
お互い気負わない関係になれてきている。 



「誰がこのくらいで寝たきりになるかよ!
もっと鍛えてやろうか、バーンビっ」

潤と2人でちまちま抱えて運んでた薪を
残りぜんぶ一輪車に乗っけて、
笑いながら岡田先輩が豪快に運びだす。
なんだかんだ言いながら俺ら2人のことを
後押ししてくれてるんだよな。




大した役にも立ってないのに
腹は減ってきて
リビングから続くデッキには
バーベキューの支度が用意されていた。

牛に豚に羊
岡田先輩が狩猟したジビエの猪肉、鹿肉
食いきれない程の肉を振る舞ってくれる。

「まるでハイジの世界みたいだね。」

「ああ、確かに。
ここは大自然の中の山小屋風だしな。」

「じゃあ翔は今夜は牛小屋の干し草で
寝るんだな?」

「ちょっとウソでしょ、
勘弁してくださいよっ、俺、客ですよ?」

「おまえは客じゃねーよ。
俺の客は潤だけだよ、
明日の晩飯は長野くんのレストランに行って
ジビエ肉で最高級フルコースを堪能させて
やるからな。楽しみにしてろよ、潤。」

「はい、ありがとうございます。
でも、今夜のバーベキューもすご美味しくて
正直驚きでした。俺、ジビエ肉って
もっと食べにくいのかなぁって
勝手に思い込んでて。」

潤のグラスにコケモモ酒を注いでやると
美しい色味の酒を一気に飲み干す。
酔いが回らないようにしっかり食べさせた
つもりだけど、
甘酸っぱくて口当たりの良さが
潤の好みに合うようで、
けっこうな量を嗜んでいた。



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