イラクサの棘
第8章 温泉
「狩猟してすぐ丁寧な下処理をしとけば
大抵の野生の生き物は臭みもなく喰えるよ。
大自然の中の生命だからな
粗末に扱ったり、無駄に殺しはしない。
畏敬と感謝、それと共存だな。」
愛護団体や、保護意識
それらはあくまで人類が頂点だという観点から
発する強者の台詞。
少なくとも岡田先輩は
この大自然の中で、生き物、野生の動物も含めて
人間であるが故の思い上がった気持ちは皆無だ。
「生命かぁ、恥ずかしいけど
俺、普段からそんなことを意識して
食べたりしてなかったです。」
気恥ずかしそうに岡田先輩のグラスに
手土産の日本酒を注ぐ潤を見ながら
うれしそうに乾杯するぞと言ってくる。
「またですかぁ
もう、5度目の乾杯ですよ?」
「うるせぇぞバンビ!
美人からのお灼は格別なんだよ。
それに俺はうれしいんだ。こんなに素直で
かわいい潤をおまえなんかが
連れてきたんだそ!」
「おまえなんかがって!
あと、バンビってやめてくださいってば!」
「バンビ翔さんもはい、どうぞ。」
「おっとと、ありがとうな潤。」
めちゃくちゃ可愛く微笑む潤からのお酌に
鼻の下伸び過ぎだって岡田先輩からのツッコミ。
なんか俺、2人からいいように揶揄われてる?
「じゃあ、バンビと潤
俺らの奇跡の出逢いにカンパーーーー!!」
3人で囲むバーベキューコンロで燻る炎から
生まれるこまかな粉塵が揺らめきながら
満点の星空に向かって舞い上がっていた。