イラクサの棘
第9章 露天風呂
「ほんとだ。腕とか肌がつるつるになってる
潤の言った通りだな。」
「うっうん、でしょ。えっ?…あっ」
右手で握ってたビール缶を
俺から取り上げて飲みかけだったそれを
ゴクゴクと一気に飲み干す翔さん。
「ぷはぁーマジでうめぇな!
ガツンとした苦味がたまんねえ。」
これって…翔さんと
間接キスしたことになるのかな?
なに馬鹿なことっ
男同士で間接キスとかっ
単なる野郎同士の回し飲みだっての!
あまり目立たない翔さんの喉仏に
首筋から汗がゆっくり伝って流れ落ちる。
「もうっそれ、俺のビール!」
「ダーメ、潤は今夜は飲み過ぎだ
あとはノンアルか、炭酸飲料にしとけよ。」
ほらもう顔が真っ赤だぞ?
そう言って伸びてきた翔さんの指先が俺の
頬を優しく撫でてくるから
妙な気恥ずかしさで、お湯を片手で掬って
おもいきり翔さんに浴びせかけた。
「おわぁ、潤おまえっなにすんだ!」
「だってっ人のビール横取りするからだよっ!」
「ハハっ温泉で痴話喧嘩か?
おまえらやっぱり仲良いなぁ。」
「もう、俺っ先に部屋に戻るから!
じゃあ岡田先輩、お先に失礼します。」
わざと乱暴な足取りで足早に風呂場を出た。
フゥゥーー
大きめのため息でもまだ落ち着かない。
バスタオルで身体を包み込むように
急いでふきながら
身体に感じる違和感に目を見張った。
「はぁ?なんで?このタイミングで?」
おもわず口を両手で覆うと
慌ただしく着替えだけをすまして
2階の客室へ向かってダッシュする。