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イラクサの棘

第11章 牧場の朝



「おまえらなぁ、いい加減にしろよ
2人だけの世界になりやがって。」

「あ、先輩食べないなら
俺がぜんぶもらっちゃいますよ?」

「馬鹿やろう、
そんな事したら、バンビには薪割りに
干し草運びに、馬の世話だぞ。」

3人で馬鹿みたいに笑い合いながら
賑やかに時間が過ぎていく食卓。
潤の手作りスープを3度おかわりをして
満たされてた腹、腹ごなしに部屋の掃除を手伝う
羽目になったけどちょうどいい運動になった。



皿を洗い終わった潤がエプロンの
ポケットを探っている。

「どした?」

「ん?ううん、なんでもない…」

「着信でもあったのか?」

「…ん、でも知らない番号だから…」



伏目がちになる潤。
瞳の奥がわずかに憂いを帯びたように見えた
おそらく心当たりがある番号なんだろう。
だが、潤が敢えて知らないふりをするなら
それでいい。
憶測、推測、ましてや詮索した
ところで潤との距離感が縮まる訳でもない。



「さっき俺にも電話があったよ。」

「…誰から?」


あくまで真正面からの正攻法
誠実さは虚像感だけでは造れない
潤に対して何処までも真実だけを
告げていると思わせなければ。

病室のオッさんだよと軽めの口調で伝えると
安心したように可愛くはにかむ。
けど、その顔はすぐに曇ってしまう。


「先生はお元気だった?
俺にも電話してくれればいいのに。」

「潤、あのな…そろそろ
個展会場を訪問する日程を
決めてくれないかって連絡だったんだ。
向こうからも問い合わせがあったらしい。」

「えっ、…そっか
つい、この旅行が楽しくて…忘れた
そうだよね、そろそろ…決めなきゃだよね。」




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