イラクサの棘
第12章 to be or not to be
「よーしよし
いい子だな、よーしよし、大丈夫か潤?」
「うっうん……だっ大丈夫っ…」
「身体がちゃんと覚えてたみたいだな。
こうしてみると、バンビ、おまえ
美女を救い出した王子に見えるぞ。」
「はあ?潤はしっかり乗れてましたよ。
ちゃんと練習したら、直ぐに
一人でも乗れて走れるようになりますって。」
体幹がしっかりしてたって
先に降りた翔さんが両手を差し伸べくれる。
降りるのにもたついてたら
耳付近をやたら気にしてた馬が首を左右に
激しく振りながら大きく嘶き
いきなり前脚を上げる。
「潤っ危ないから手を離せっ!離すんだ!」
もう…ダメだ!
振り落とされない様に
握りしめていた指先の力が抜けてしまう
バランスを崩して
振り落とされそうになったその時
翔さんが抱き抱えるようにして
俺の身体ごと受け止めてくれた。
「よくやったな、翔。
おまえら先にロッジに戻ってろ。
俺はあいつを落ち着かせなきゃな。」
「………っ翔さん……」
「大丈夫か?どこも痛くないか?」
「…ん、平気…」
俺を抱き抱えながら、足場の悪い馬場から
抜け出してそのまま連れいってくれようとするから
もう降ろしてと言うと
そっと降ろしてくれたんだけど
腰が抜けたみたいにうまく立っていられない。
「…なんで?……」
「ハハっムリすんなよ。
驚いて腰が抜けてるんだよ。
ほら、抱っこがいい?それともおんぶ?
俺はどっちでもいいぞ。」
抱き抱えられるのは
あの列車の中だけだと思ってたのに
俺がドジなせいで
翔さんには迷惑かけてばかりだ。