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トライアングルパートナー

第17章 純子の嫉妬

 今田純子は野望を達成するため、大好きな夫・今田進一の体を23歳の女・小山内慶子に提供した。純子の取った行動は、慶子の隠された能力を買うため、先行投資をした、と自分に言い聞かせ慰めた。純子は進一の気持ちを知っていた。部下を指導する気持ちが愛に変わったことを感じていた。進一はまだ自分の気持ちに気が付いていない。
 小山内慶子は日本屈指の財閥小山内グループの承継者である。このグループの財力が将来も存続するかは、慶子の能力をどう引き出すか、に掛かっている。遺伝子は十分すぎるくらいの素質を備えている。しかし、今は、役所2年目の行政ウーマンの卵で、肩書も、権限もない。
 今の彼女には、とびきりのかわいい笑顔に好感が持てるだけで、体の凸凹の曲線も一部の男性の目を引くだけだ。視点を変えると、見るからにほうけた笑顔、思慮深さの片りんもない。均整の取れた体を強調するかのようなファッションはひどい。調査に寄って、純子の出した結論として、慶子はかわいい見てくれだけで、若さが取りえの干物女にすぎないが、大きな財力を持った親族を後ろだてにしていても、変に威張っていたり、傲慢なふるまいが一切ない。人を思いやり、ひたむき、健気、素直である。彼女の性格が、いいのか、良くないのか、分からない女ではあるが、純子はこういうレトロかモダンかどっち付かずの感覚のキュートな女が好きだ。引き出しが多く、器が大きく有望な女と言えた。
 そんな評価を純子が出していたのには訳があった。彼女は会議、住民説明会、イベント招待など、多忙を極める激務だ。当然、与えられた部長室にこもって執務することはあるが、出張することが多い。部長室を出たり入ったりするためだけに、部長室があるようなものだ。まあ、少しは書類整理に使うことはある。
 その出入りするだけの部署に通じる廊下で、やけに、頻繁に会う女性職員がいるのは気が付いていた。純子から見ても、かわいい女だから自然に目に付く。純子はこの女を廊下で見るたび、いつも思っていた。こいつ、仕事もしないで、いつも廊下をうろついて、何をしているんだ、と思っていた。

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