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トライアングルパートナー

第17章 純子の嫉妬

 そんなことがあった先日、夫の進一が昼休み、部下の女と会議室で二人きりになり食事をした、と情報が入った。妻帯者と二人きりで食事をしたなど、それも役所内の会議室で、考えられない。その女の思慮の浅はかさから、また、連日で、妻帯者と二人きりで食べるに違いないと踏んだ純子は会議室に押し掛けた。押し掛けてみてすぐに分かったが、この女は進一に興味があるようだが、どちらかと言えば、自分のほうに、興味があるようだった。この女は、例の廊下で良く見掛ける女だった。こいつはあたしを観るために、廊下をうろついていたのだと直感した。なぜか、自分の分の弁当まで作ってきていると言うではないか。浮気の現場を押さえられることを予想していたとしか考えられない。浮気情報はこいつが流したのか。とにかく、何という先見だ。そして、純子が押しかけてきたら食事を一緒にしたい、と言う。強かな女。
 なんなんだ、この女、何考えているんだ? 仕方なく、自分は慶子の気持ちを受け入れられない、と断言しようと思いながら、会議室で食事をすることにした。進一の浮気の現場を押さえる、つもりで乗り込んだのに。
 それなのに、変な方向に向かってしまった。どうして、あんなことになったのか。純子は思い出しただけで、顔が赤くなって体の芯がほてった。断片的だが、すごい、なまなましい映像が純子の頭の中に映画のようによみがえる。純子は成人向けの映像など見たことはないが、たぶん、それに近い状況だった、と思う展開で、今、考えても、あれが現実だったとは信じられない。ずっと、あのとき、あんな行為を慶子にさせた理由を考えていたが分からない。自分で言うのも何だが、優秀な頭脳をフル回転してもどうしてあんなことをしてしまったのか、皆目、分からない。それも、若い女性の口に夫のものを提供してしまった。いや、なんと表現したらいいのか、なめさせた? くわえさせた? 味わってとか? あのとき、言っていた記憶がある。純子の頭の中で、現実味のない映像がフラッシュバックする。そのたび、純子は頭を左右に大きく振って、この忌まわしい映像をかき消そうとした。純子には、別人のだれかがしたとしか思えなかった。

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