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トライアングルパートナー

第17章 純子の嫉妬

「植木係長はヒトメボレを携帯していますよね?」
「え? なんで、分かるんでうすか?」
 植木は驚いた顔でジャケットの内ポケットからヒトメボレを出した。そこに純子は持っていた自分のヒトメボレを並べた。2つのヒトメボレがわずかに光った。
「純子様、いつものクラブでいいのですか?」
 運転手が横を向きながら純子に声を掛けてきた。植木はその顔に見覚えがあった。小山内慶子だったが、入庁以来、企画課しか在籍しなかった植木には同じ役所の入所2年目の新人の顔など正確には覚えていない。
「分かりました。いつものクラブですね? あたしもお願いします」
 慶子がヒトメボレを前部座席の間から差し出した。3つのヒトメボレが並ぶと、3つのスマホが虹色に光った。
「え? これって? どうなってるの?」
 植木はヒトメボレの発光に驚いて声を出した。
「なんか、楽しくなってきたわね、慶子さん」
「はい、純子様。すてきな予感がしますわ」
 純子と慶子は満面の笑顔で植木を見つめた。植木はこんな僕にもモテキが来たのか? そう思わずに入れない気持ちがあふれた。植木の体の芯から湧き起こる高揚こそ、ヒトメボレの作用だった。

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