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トライアングルパートナー

第25章 幸せに向かって

慶子は会議室でおじさん、いな、今田係長とあいさつを済ますと、これからの日程の説明を受けた。風采の上がらない風体ながら、実に手際が良いおじさんだ、と慶子は上司を不審者呼ばわりして軽率だったと恥じた。
「明日から新人職員研修が5日間、あります。午後4時、研修が終了しますので、終わったらこちらの係に戻ってきてください」
 と、封筒と一緒に書類を渡された。
「研修日程表です。今日のうちに目を通しておいてください。女性更衣室は後で高橋さんに場所を教えてもらってください」
 その後も係長の説明が続き、さきほどの女性、高橋が座っていた席に慶子が座るらしい。
「あなたの研修が終了後、窓口にいた高橋さんは奥の隣にスライドします。研修後、1時間だけ、高橋さんの隣で係の雰囲気、住民との接遇の様子を見てください。いきなり何でもは無理ですから、雰囲気だけ感じてください。
 知識を身につけることも大事ですが、お客さまの話をまずは丁寧に聞いてください。あと、身の回りの分からないことは、女性同士、彼女に聞いてください。分からないことは恥ずかしがらず何度でも聞いて身につけてください。仕事の上での必要な知識は、僕があなたの能力に合わせてゆっくり指導しますから緊張しないで安心して働いてください。とにかく、しっかり、ゆっくり、あせらず楽しくいきましょう」
 今田係長のやり取りを聞いていた慶子は優しいおじさんが係長で良かった、と思った。慶子はこの風采の上がらないおじさんが、これからの慶子の人生を楽しく、幸せにしてくれる存在になるとは思ってもいなかった。ピンポンパンポン、チャイムが鳴った。
「これね、お昼休みの開始のチャイムです。小山内さんはお昼は? このビルの展望階にはレストランが2軒出店していますし、1階にはコンビニもあります。お弁当がいいなら自席で食べるか、ここで食べるか、ですね。会議室は午前中の会議が長引いたときは使っているときがありますが、だいたい、空いていますから利用するといいです」

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