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トライアングルパートナー

第28章 人格の統合

 さきほど、痛点の話をした。これが問題だ。病むとたいていのものは痛みを感じる。DNAに記憶した防衛本能が働く。速い心拍数、息切れ、めまい、血圧上昇、血管収縮、下痢、便秘、食欲不振、性欲不振、発熱、しびれ、腫れなど人が意識しないで起こる体の反応だ。これを取り除くこと。身体に起きる不調は愛を拒絶する時がある。それ以上の愛を注がないと痛みを押さえることは難しい。これこそ献身的な介護、あるいは医療というのか。医学が発達する前、人は病を祈り、手かざし、励ましなどを使って痛みをやわらげようとした。古にはこの能力を備えた人物が祈祷師と崇められて当然だったのだろう。
 このように特定の人間だけではなく、だれでも「心」「肉体」を超越した愛を注ぐ必要がある。それがまれに起こる「ヒトメボレ」である。相手を見ただけで「愛」が生まれる。なぜ、どうしてなど心をひかれる理由が思い当たらない。これも「愛」なのか。「愛」ほど漠然とし、客観的に説明できるものはないのだ。だから、何が愛、と言い切れない。ただ言えることは、相手の気持ちいいところ気持ちよくしてあげることだろう。隣りにいてくれるだけでいい。それも愛だろう。
 このように心と体から痛みが消えた愛で世界が満たされることは、今田潤子にとっての「理想郷」だ。愛があれば、嫉妬、妬み、嫉み、怨念、殴打、隠す、盗む、犯す、など消滅させることができる。愛に満たされていれば病気は自身の治癒能力で悪化を防げるに違いない。そういう社会奉仕の精神をはぐくむ必要がある。
それは、組織的に大学の社会教育カリキュラムに愛を植え付ける授業を組むことだ。学生を健全な精神に調教する。大学の学生を愛の伝道師に仕立て上げる。伝道師から発散される愛を感染させていく。愛の喜びを脳と肉体に埋め込む。草の根をはわすような活動がk区で成功すれば近隣区に広げられる。第2の京王大学を近隣区にも増設できる。やがて、全国に「愛で満たす」教育カリキュラムを普及させ、「完全に愛で洗脳された卒業生」が地域に根付き愛をたっぷり注いでいく。時間は掛かるかもしれないが世界が愛で満たされた桃源郷は確実に誕生する。

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