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トライアングルパートナー

第29章 慶子の悩み

 小山内慶子は自分のマンションのベッドの上にいた。先程まで横にいた進一は昨晩二人で初めての夜を過ごし朝食を済ますと家に帰った。小山内慶子は今田進一とパートナーになることを現パートナー・今田純子から許された。よって、この行動は純子公認なのだから不倫ではない。今田邸の会食以来、純子は部下の植木を今田邸に招いていた。進一は二人の行動を黙って見ている状況だが、慶子はそういう状態になってうれしかった。
「純子さまを見習って私たちも」
 そう言って慶子は職場で進一を昨日、自分の住んでいるマンションに誘った。純子には「係長を一晩夕食の味見をしていただくのにお借りします」と内線電話で伝えたら「ふ~ん、そうなの? 二人で美味しい料理をゆっくり楽しむといいわ。明日の朝食も一緒よね?」と言っただけだったが、慶子は進一に対する思いを隠す必要がなくなって実に精々しい気持ちだ。
 慶子は純子に会議室で進一に対し奉仕することを強要された日のことを思い出す。お嬢さま育ちだった慶子にとってあの一件だけは衝撃すぎて今でも恥ずかしさで目を塞ぎたくなるようなことなのに、まぶたを閉じると目の前に実像のようによみがえる。目を閉じるとあの実像がよみがえり体が熱くなる。すると、進一のものが欲しくてたまらなくなる別の自分が生まれてくる。あれ以来、体がそういう体質になってしまったと言ってもいい。役所の廊下で純子にすれ違うとき、純子の目で見つめられると慶子はそういう体質になったことにいい難い後ろめたさ、申し訳なさを感じ体から血の気が引いていった。
「純子さまに眼差しを向けられると…… あんな目で見られたらわたし…… 好きにしていいのよと言われているよう…… 歯止めが効かなくなりそうでおかしくなっちゃいそう……」

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