テキストサイズ

トライアングルパートナー

第30章 慶子の新しい試み

 もともと、慎之介は女神から多情愛を普及する使命を受けて天界に愛想を尽かし、天界を去るつもりだった。それをエロMエッサイ無さまに救われた。チャンスを与えられた。それなのに。本当の天使になることを止めるという犠牲を払ったと思っていたが、ウソだった。自分をごまかすためのき弁だ。慎之介にとって天使になることよりも、慶子を愛することのほうが大切だった。初めて愛する気持ちを知った。天使になることを犠牲にした、なんて感じていない。天使になる夢を捨てることに悔いはない。慎之介は慶子にありのままの自分を見せることを決心した。これまでやってきたように、今の幸せを続けるには天界から人間界に移るしかない。
「慶子ちゃん、ごめんね…… 男性の格好をして慶子ちゃんの気を引きたくて…… 男装したらわたしに興味を持ってくれると思ったの。だって、慶子ちゃんて毎日のようにベッドで寝る男を取っ替え引っ替えしてたのでしょ? そんな慶子ちゃんの気を引くにはこのくらいしないと」
「えぇえー ううぅうっそぉー あなたぁ、何なの? 勘違いもいいところだわ。取っ替え引っ替えなんかしてないし…… そんな軽薄な女じゃないわ…… わたしのどんな調査をしたの? きょうで3回しか会ってないのに…… なんでそんなひどいことを言うの?」
 慶子の両目から涙がこぼれ落ちた。
「慶子ちゃん、初めて会ったとき、わたしを愛してくれたのなら分かるよね、回数なんて関係ないよ、身をもって分かっていることでしょ? 何回会っても同じ。ひどいことを言われてわたしを嫌いになった?」
 慎之介は慶子をスマホ・ヒトメボレを使って一目ぼれさせた、と思っていた。自分の魅力とか一切関係なくほれさせることができるキューピッドの恋の橋渡しのアイテムはだれもがほれてしまう。人類はキューピッドによってカップルにしてもらい種を存続させてきた。
「うーん、ぜんぜん…… 嫌いになんてなれないみたい…… でも、あなたがなんか憎たらしい」
 慶子は首を右左に振ってから悔しそうな顔をして言った。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ