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トライアングルパートナー

第31章 慎之介の波

「そうよね、お父さまも慶子さんの将来は心配だわよね? 世界的な貿易実績を誇る小山内グループの後継者は早く決めたいものね。グループが安定することは日本の株式市場の安定でもあるわ…… でも、そんな重要ポストに進一さんでいいのかしら? お父さまは能力第一主義ではないのかしら?」
 純子は進一を見ながら慶子の応えを待った。
「あっのぉー それなんですけど…… 係長の住民説明会での調整能力は経済界でもかなり期待されています。わたしは良く分からないのですがかなり有名らしいです」
「そうよね…… わたしも彼の特殊能力は買っていたからパートナーにしたのだもの」
「あの…… 純子さまは係長といつ離婚していただけますか?」
「あら、急いでいるのね? では、すぐに提出するわ。なんて言っても自分のところの役所で手続きしているのだからすぐだわ、安心して」
「すみません、急かせてしまって…… 私たちの婚姻届は結婚披露宴後、出すつもりです。父が披露宴は大々的にすると言って楽しみにしていますから…… だから、進一さんとは同棲を始めているだけです。それに…… 佐々木慎之介さんという方とも将来、同居するつもりでいますのでみなさまにはお知らせしておこうと思います。進一さんにはすでに慎之介さんに会っていただいています」
 慶子はそう言ってから進一を見つめた。慶子がさらに話をする。
「純子さまと進一さんの離婚届が受理された後、父に報告してから披露宴の日取りを進める予定です。慎之介さんがここにいるといいんですけど…… リア・ラブゲームの売れ行きがいいみたいで、もっと売れという会社の指示で大忙しみたいです」
 純子は慶子の話を聞いて驚いた顔をした。
「何それ? だいたい、佐々木慎之介さんって初めてお聞きするお名前だわ。あなた、そんな方とこっそり関係していたの? わたしや進一さんに内緒で?」
 慶子が純子の動揺を鎮めようと言葉を選んで言い淀んだ。

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