テキストサイズ

トライアングルパートナー

第32章 純子の構想

 夕食会の席で、純子は進一と離婚し、植木と再婚すると伝えた。進一は離婚後、慶子と結婚すると伝えた。だれもがそれぞれの報告を平然と聞いた。
 なぜなら、離婚や結婚などの手続きは戸籍法上のことで、今までの関係は変わらない、とそれぞれが認識していたからだ。
 つまり、メンバー全員が純子が提唱する多情愛者になっていた、ということだ。純子自身は生まれたときは他の赤ちゃんと変わることなく、なんの思想もない純真無くの赤ちゃんであった。もちろん、生まれたときは今のような多情愛という思想を持つ女ではなかった。ある事故を切っ掛けに多情愛の思想を獲得した。
 純子は進一という特定の男を一途に愛し、結婚という名目で彼を拘束し、毎夜、彼を性欲のはけ口とすると同時、調教という手段を持って進一の性癖をも変えた。とは言え、昼の人格・純子は人格の分離という特殊な状況で夜の人格・潤子が夜間になると、進一を縛り上げもてあそんでいたことを全く知らなかった。
 夜の人格・潤子が進一という風采の上がらないフツメンに執着したのは昼の人格・純子のため、優秀な彼を彼女が提唱する多情愛を推進するグループに囲い込むためだった。
 だから、夜の人格・潤子は毎夜、進一を愛した。進一も潤子の愛を受け入れ喜びを感じた。
 そんな日常が続き常態化した頃、進一の部署に新規採用された大学を卒業したばかりの新人・小山内慶子が配属された。
 夜の人格・潤子が昼の人格・純子ため、純子の後継者として彼女を取り込み、かつ、小山内グループの次期総帥を自分の後ろ盾にする計画だった。
 夜の人格・潤子は京王大学在学中だった慶子を気に入り可愛がり、二人して夜の繁華街を遊び回った。慶子が大学卒業後、潤子は昼の人格・純子の勤務するK区役所に慶子を入所させ、昼の人格・純子の多情愛の普及活動を引き継がせるという計画だ。夜の人格・潤子は社会貢献するという考えは全くなかった。遊び興じて面白おかしく生きることが好きだった。働かない潤子は、働いてお金を稼ぐ純子がいないと遊べないことを理解していた。だから、自分が働かず遊ぶためには必要な金づるが昼の人格だった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ