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「たくさんの愛とは一人の人間が複数の人間を愛するということか。最愛とは、一つを言うのではないのか？」
　8ピッドの考えていた愛を根底から覆す女神の特命だった。彼は女神の命令を実行することで発生するトラブルを想定した。
　一つは、人間界で騒がれている不倫というトラブルである。そんなことを神が推し進めていいのか。混乱し悩んだ8ピッドは階段を踏み外し落下していく。どこまでも落下し、はてのない空間をさまよった。
　彼は思考ができないくらいに悩み、ついに、思考をしなくなった。自分の存在を消す決心をしたのだ。彼はブラックホールに向かった。まもなくブラックホールに吸い込まれる領域に入る寸前、彼の体が無数の黒い物体に包まれた。
「おまえもか？　おまえまで、このまま、神々のように、人類の記憶から消滅していくのか？　おまえは神にもなれない天使でもない、見習いのまま挫折し、だれの記憶にもとどまらない。おまえはだれにも愛を与えないのか？　だれかの記憶に、おまえの愛を残さないのか？　なぜ、たくさんの愛を与えることをためらう。おまえは一つの愛が絶対の愛だとでも思っているのか？　おまえはまだ、思考が足らないようだな、わしの元でとことん思考するといい……」
　これが8ピッドと邪神･エロＭエッサイ無との出会いだった。8ピッドはエロＭエッサイ無にとらわれて暗闇の世界に幽閉された。
「いいか？　暗闇の中で思考すればいい。ここには時間はない。未来永ごう、思考するかもしれない。それもおまえが望んだ道と思え。しかし、先の見えない絶望の中で、光が見えるときがかならず来ると思え、それはおまえにとって、希望の光だ。思考するのだ。希望はあると信じることだ。とことん、考えよ。おまえには時間は無限にあるのだ……　ここでは時間は無限なのだ。おまえが光を見つけたとき、ここを出るときと思え」