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トライアングルパートナー

第11章 慶子と慎之助

 慎之助も昔から聞く恋愛の橋渡しをしているだけで、その後、二人がどうなるのかは聞いていなかったが、当然、幸福になると確信している。絶対、橋渡しした二人が別れることはない。
「キューピッドのあんたが相手なんだもの、うまくいくんだよね。あたしを嫌いになったりしないよね。さっきからあたしの心臓がさっきよりぱっくんぱっくんしているけど、これは慎之助の愛が注入された結果ってこと? あたしがあんたを意識しているってことなの? これが恋なの? えっ? 愛なの?」
 慶子は初めて人を心から愛することを感じていた。彼女はかつて男から愛を告白されたことはあったが、自らが男に意識を向けたことは一度もなかった。意識を向ける前に、男たちは慶子に求愛してきた。
 慎之助もかつて人を愛するという経験をしていない。恋の橋渡しをする修行は数知れずしてきた。これが恋なのかと思った。いつもと違う、動悸、息切れ、得体の知れない苦しみが体の芯から湧き上がってくるようだ。心臓はさっきとは比べようもなくパックントックンと苦しさが増してきた。女に体を接している行為も初めてのことだ。今、慶子が慎之助にのしかかっている。慶子は状態を起こすと、慎之助の上に跨った。慶子は、その体制のまま、上体を倒して慎之助を見つめていた。すると、突然、慎之助の胸に顔を押し付けて慎之助にしがみついた。
「あんたが運命の人だったんだ? あたし、あんたのことが好きよ。だって、初めてあったときからあんたを見たら、いじめたくなったもの。こんなこと、初めてで変だと思っていたけど、そういうことだったのね。いじめたいほど、かわいく思うもの」
 そう言った慶子は慎之助のネクタイを握って引っ張った。引っ張られて慎之助は顔を慶子に近づけた。
「おいおい、お嬢さま、そういうのは止めーーー」

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