ナカまで愛でてトロトロに溶かして
第5章 【ターニングポイント】
「ごめん、もうちょっとだけこうさせて……今、ヤバい、収めるから」
うん、さっきから勃ってるの気付いてた。
バカね、出ていく前なのに。
「あぁ、幸せ」
ふいに漏れた章介の一言にキュンときたのは一生の不覚。
いってらっしゃいっていつぶりに言っただろう。
不倫相手見送る女の気分。
まるでケイコね。
作品に活かせそうって、ケイコはもっと切ない感じ出さなきゃだけど。
この後もう一度液タブに向かって集中したらまた倒れるように寝た。
「キャストが決まった、変更はナシだそうだ」
そう言われ出来上がった直後の台本を鍵山さんに渡された。
ドキドキしながらページを捲る。
それほど登場人物は多くはない“鎖と錆”は相手役の上司は名だたる有名俳優だった。
不倫ドラマは恐らく初めてだろうが演技力も高いので何の心配もない。
ただただありがとうございますって感じ。
注目のケイコ役は全くの無名女優。
この作品でデビューを飾る新人だ。
何と8000人の中から選ばれたらしい。
写真も見せてもらい、少し若く透明感が過ぎるくらいだが演技し始めると化けるらしいのでケイコに相応しいとデビューを掴んだ。
「どうしよう、ヤバいね、語彙力も低下するわ」
「オーディション俺も見たけど、大した演技力だった、化けるぞ」
鍵山さんのお墨付きなら尚更心配はない。
脚本も隅々まで目を通す。
自分の描いた漫画が活字になるって不思議。
あのシーン、こうやって表現するんだって思うと心が震える。
一行一行に感銘を受けた。
さすがプロ。
一話目、二話目と仕上がっている脚本。
最後の一ページまで読み終えて。
「凄い!ヤバい!大好き!」
興奮冷めやらぬまま鍵山さんに抱き着いた。
スリスリして犬みたいに尻尾があれば完全に振ってる。
「で…だな、最期のラストシーンは先に描かなきゃなんだけど、頭の中は仕上がってるか?大まかであってもドラマ脚本家には細かく伝えていかなきゃならない、ドラマオリジナルのラストだって構わないぞ?原作とは違う景色もドラマならではだからな」