ナカまで愛でてトロトロに溶かして
第7章 【譲れないもの】
「えっ!?」
「シっ!声大きい」
シュン…としても項垂れても罰だから。
そもそもマンガ大賞穫るまでシないって約束破ってるし。
私が相手にしないって決めたらどうなるか知らしめてやる。
当たり障りない会話しかしてやんない。
ジェスチャーで「ごめん」されてもニッコリ笑うだけ。
一定の距離を保ち続けてやるんだから。
苦い顔のまま帰らせた。
それからはデスクでパソコンに向かって黙々と作業に打ち込んだ。
また食事を忘れそうになり千景ちゃんが作ってくれたサンドイッチを頬張りながらずっと。
とにかくゾーンに入ってしまった。
こうなればテコでも動かない。
トイレにもタブレットを持ち込む始末だ。
電話も勿論電源オフ。
完全にシャットアウトしたタカラアキが生み出すモノは非現実よりも現実に近い無垢な愛。
誰かをまた愛してみたくなるような。
自分でも未知の世界をよりリアルに合わせて偶然と必然の紙一重を掬い取って今描いている。
自分の中にまだこんな感情があったんだ…とふと違う視点から感じる事もある。
それを出せるだけ出して形にするのも今しか描けないセリフやタッチを存分に読み手に与えてやりたい。
タカラアキのまだ知られてないもう一つの顔……的な。
あれ、私、何言ってんだろう。
ダメだ、燃料切れ。
元の自分に戻っちゃった。
これだけ情熱注いで描いたものが一瞬でガラクタに見える時がある。
出来ればこの憑依したまま描き上げたかったな。
もしかして、これボツ?
自問自答しても仕方ない。
「ニャ〜っ!!」
ベットにダイブして今から偏頭痛と闘う。
シャワー浴びなきゃ。
まだ何か食べた方が良い?
最近筋トレ出来てないなぁ。
右手が痛い。
お酒飲みたい。
旅行行きたい。
美味しいもの食べてリフレッシュしたい。
パワースポット行きたい。
イキたい。
一人じゃイヤ。
誰でも……じゃなくて。
最近会ってないアイツと。
エッチしたい。
「はぁ〜!チクショ」
シャワーを浴びてタオルドライしてるそばから携帯が鳴っている。
電源着けたら鳴りっぱだ。
肩にタオルを掛けたまま通話した。
「何?シャワー浴びてたから今」