ナカまで愛でてトロトロに溶かして
第1章 【私、TL漫画家です】
ちょっとオタク気質なところも実はお気に入りで安心して任せられるんだけどね。
それとは全くの正反対で入ってきたのは蓮くん。
色んな漫画家さんのアシスタント経験があって一応面接したんだけど。
本当は不純な動機。
顔も身体もタイプだった。
男の子らしいちょっと筋肉質な肉体と、これが一番の決め手。
指が長くて綺麗だなって思った。
第一印象で(あ、この手描きたい)って。
だからこちらも即採用。
「ねぇ、まだ別のバイト行ってんの?」
作業もほぼ終わり玄関まで千景ちゃんと蓮くんを見送る際、いつもお決まりのごとく彼を口説く。
ハハハ…て愛想笑い、何回目?
渋るね〜2人とも。
「アキ先生の作品は素晴らしいです、お手伝いしながらめちゃくちゃ読めるの楽しみにしてますから」
「じゃ、他の辞めてこっちに嫁ぎなよ」
「え、嫁ぐ!?いや、それは…っ」
今更ゆでタコにならなくても良いでしょ。
千景ちゃんも私たちのやり取りをクスクス笑って見てる。
2人を抱き締めて驚かせちゃお。
「いつもありがとう、2人が居なければ今の私も作品も存在しないよ」
「「はい…!!」」
「だから結婚しよ?3人で暮らそう〜!」
「か、からかわないでくださいよ」
「遠慮しときます」
このやり取りも板についてきたね。
半分冗談で半分本気…なんだけどな。
王子と姫にはまだ伝わらないようだ。
こんなに身の回りの世話してもらってるのに一線引いてくるのは逆に有り難かったりもする。
アシスタントの経験上、締切前後は泊りがけだとしても、それ以外は離れて過ごすのが鉄則らしい。
空想産物を滞らせてはならない。
創作に時間を注ぎ込んで欲しい…なんて、私の場合はそんなの関係なく降りてくるから。
なんならキミたちと話してる何気ない会話からヒント貰ったりするし、キミたちを見てムラムラしながら描いたりも…ゴニョゴニョ。
はぁ…と大きな溜め息ついて寝室のベットにダイブ。
この気の抜けた全く自分を作ってない自由な時間も貴重だけどさ。
そして、待ってましたとばかりに鳴るインターホン。
内側のU字ロックを着けたままドアを半開きにする。
モニターで確認してるから誰だが分かっている為、特別警戒しているのだ。