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ナカまで愛でてトロトロに溶かして

第1章 【私、TL漫画家です】






「おいおい、中に入れてくれよ」




「何?用はないんだけど」




「元嫁に会いに来ちゃダメなの?」




チラッと顔を見せた元夫は珍しく無精髭。
「開けてくれなきゃ此処にタカラアキ住んでますって大声で叫んじゃうよ?」って脅しを掛けてくる。
「チッ!」と舌打ちして開けてしまう私も私なんだが。




いきなり抱きついてきて迷惑。
本気で嫌がる私に不服そうな顔。




「この前と全然態度違うくねぇ?」




「ていうか何?そっちも忙しかったんでしょ?髭剃れないくらいに」




「あ、心配してくれてんの?そうなんだよ、もうすぐ勝負を分けた大きなコンペがあってな」




「そんな話どうでもいいよ」




「あの子らもう帰ったんだろ?一杯やらねぇ?」




そう言って私の好きな赤ワイン見せてくる。
持ってたの気付かなかった。




「飲んで大丈夫なの?」




「帰れるくらい自分のコントロールは出来るさ、それとも帰らない方が良い?」




「ねぇ、お願い、赤ワインだけ置いて今すぐ帰ってくれる?」って可愛くウィンクしてあげる。
こんな憎まれ口を叩くような関係になったのもごく最近だ。
もう別れて2年か。
電話番号変えなかったのは仕事の都合。
けど何処かで来るかもって思ってた私も、まだまだ弱かった。




「絶対一緒に飲む」




「チッ!」




おつまみを簡単に有り合わせで作っちゃうところもいけ好かない。
キッチンでYシャツ腕まくりしてネクタイの先はポケットに突っ込んでたりさ。
まだこの人と繋がってんだなって嫌でも思い知る。




「生ハムがあるとは優秀な冷蔵庫だな」




「優秀なのはアシスタントの子だよ」




「お前が一人になったら本当ロクなもん食ってないんだろうな、俺も安心だよ、良いアシスタントの子が居てさ」




一時期は本当、ゴミ屋敷になりかけたからな。
あんたが様子見に来なければ大変な事になってたかもね。
「どうしてるかなってごめん、気になって掛けちゃった」って3ヶ月ぶりに聴いた声に泣きそうになったのは今でも覚えてる。




私から嫌になって別れたのに。








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