ナカまで愛でてトロトロに溶かして
第2章 【それぞれの葛藤】
突然現れた大きな身体に奇抜なドレス。
耳から顎ラインにかけて斜めにカットされたオカッパ頭に大きなツバのお帽子。
何処の大奥様かと思うほど存在感バッチリのオバ様。
本当、あの有名なファッションデザイナーのお方を思い浮かべてしまう。
親しそうに話す鍵山さんを見て相当上の人なんだろうなってわかる。
「あ、先生、彼女がこの前話してたタカラアキです」と紹介してくださったので経緯はわからないけど会う前にお話されてたんだと挨拶しました。
「噂は聴いてますよ、どうも、柊ミコトです」
「えっ!?えっ……えぇっ!?」
「アハハ、良いリアクションね〜!何か私のファンだって!?物好きね〜」
自然と涙が溢れてくる。
ペコリペコリ…と頭を下げるので精一杯。
挨拶の声が出てこない。
「この子本当に柊先生の大ファンなんですよ、先生の影響で漫画家志したんですって」と鍵山さんのナイスフォロー。
ずっと「ガハハハ」と笑ってらっしゃる先生は太陽のようだ。
私の名前、知っててくれたー!!
サラッとハンカチ渡されて涙を拭う。
声が上擦っちゃうよ……このお方が柊ミコト様だなんて…!!
「ずっとずっとファンです…っ」
周りの目なんて気にせずに号泣してしまった。
化粧崩れヤバいよ。
そっと優しくハグまでしてくれて。
「あなたの描く絵の原点になれて嬉しいわ」とお言葉を頂いた。
こんな大ベテランの方でもいくつかテーブルを回られていたので新人の私も回らなきゃと背中を押される。
鍵山さんに着いてって何人か名前を知る漫画家に挨拶が出来た。
「拝見してますよ、お会い出来て嬉しい」
「ありがとうございます、私も拝見させて頂いてます」
お互いの作品褒め合って時間を過ごした。
パーティーは盛大に行われ、来賓挨拶やまさかの顔見せ挨拶もあり皆の前に立たされる経験もした。
結構ド派手なドレスコードしてる方々の中でシックな黒でキメさせてくれて鍵山さんのセンスに感謝する。
終盤に差し掛かりお手洗いに行った。
個室に入りちょっと休憩。
お酒はそんなに飲んでないけど緊張の連続でドッと疲れていた。
ずっと笑顔で居なきゃならないのは長時間だと結構キツい。