ナカまで愛でてトロトロに溶かして
第1章 【私、TL漫画家です】
離婚原因は結婚した途端にガラッと変わってしまった章介に戸惑いと失念があったから。
釣れた獲物に餌はやらない…じゃないけど明らかに態度が変わった。
セックスもしなくなってほとんど顔も合わさなくなって。
結婚してる意味がなくなってきて。
証拠を突き止めた訳じゃないけど勝手に浮気してるんじゃないかって勘違いまでして。
顔を合わせたら喧嘩する日々に疲れてしまった。
「俺は仕事してんだよ!家で漫画描いて楽に生活させてやってんだろ!それなのに浮気?ふざけんなよ!たかが帰り道一緒だから送ってっただけだろ、何もねぇよ!」
その一言が私の中のコップの水がすれすれのところで保っていた表面張力ごと崩れて溢れ返ってしまった瞬間でした。
「離婚して」と言ってもすぐには応じてくれなかったね。
世間体?会社の面子?
「抱いてもくれなかったじゃない」に対しては「ごめん、勃たないんだ」で返してくるんだもん。
私にだけ勃たないんでしょ。
だったら尚更一緒に居ると余計に辛い。
精神的に崩壊してしまう寸前だったと思います。
いや、私たちはまだ未熟者同士だった…が正しいのかも知れません。
離れてみてようやく見えてきた…じゃないけど、あの時電話掛けてきてくれて此処に飛んできてくれた時は何で離婚しちゃったんだろうって思ってしまった。
泣きながら抱きついて、落ち着くまでずっと傍に居てくれた。
ゴミ屋敷だった部屋も綺麗に片付けてくれて初めて章介の作ったご飯を食べた。
別れたから、と高を括り我儘放題してやった。
本当に今度こそ離れていくんじゃないかって思いながら素直にはなれなくて。
頭の何処かで漫画描いて楽してるって言われた言葉が蘇ってくる。
その度に仕返しじゃないけど我儘ばかり言って困らせてやった。
「お前の我儘には慣れたよ、別れてから初めてそんなお前見たわ」と目尻にシワ寄せて笑う。
私は久しぶりに見たよ、章介の屈託のない笑顔。
それをずっと見てたいなって思ってプロポーズ受けたのも思い出した。
「どんなの描いてるの?見て良い?」
これも別れて初めて言われた。
結婚してる時は見向きもしなかったのにね。
だから初めて見せる時、担当者に見せるよりドキドキしたのよ。