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第1章 0

悪夢を見て魘されてる私を彼は叩き起していた。

何度も名前を呼びながら私の背中を叩いて、私はそれでも悪夢からは呼び戻されない。

両親は私を居ないものとして扱って、ひとりぼっちになる私を見ても知らん顔。

あの子の方が大変なのよ、そう言わんばかりの態度。

見て欲しい、私を見てほしい。

ここにいるの

ねぇ。

お願い、私を見て……

懇願したところで夢の中の両親は妹と楽しそうに笑い合っている。

あの子だけいればいい、私は要らない。

イラナイコ……??

突然、地面に穴が空いて私は真っ暗闇にに落とされた。

光の中にはいけない私は闇に墜ちるのが運命で。


ゆっくりと目を開けると、そこには少し汗をかいてる彼の心配顔が……。

「ご、ごめんなさい……」

思わずついてでる謝罪の言葉。

先手を打って謝れば、これ以上怒られることは無い。

頭を下げている人に対して殴る人はいないのだから。

謝り癖が着いてる私を見て彼は優しく首を振る。

「怖い、嫌な夢を見ていたんだね」

幼児に話しかけるようなゆったりとした口調。

「夢で良かった、大丈夫、ここにいる限りは僕が君を守るよ」

私は夢の中から這い出せていないような感覚を持ちながらも、確かなその言葉にしがみつきたくて、彼の頬に触れた。

彼は何も抵抗もせずに私の好きなようにさせてくれている。

頬に触れて、唇に触れて、耳に触れて、首に触れて。そして、ようやく、理解する。

ここは、私がいたあの暗い世界じゃない事に。

そのことに気づいてまた、涙が溢れる。

彼は私を抱きしめて、子供をあやすように頭を撫でてくれた。

「凡……さん……っ、こわ、怖かった……」

絞り出す言葉、彼は何度も頷きながら頭を撫でる。恐怖と絶望に支配された身体を解きほぐすように。


「大丈夫、それはただの夢だ。現実じゃない。その証拠に君は、今どこにいる? 」

問いかけられた質問、琥珀色の瞳が私を見つめる。私は、彼の瞳を見つめ返した時にその中に泣き腫らした顔をした自分を見つめた。

「凡……さんのおうち……」

ぽそり、子供のような声音で答えてしまう。

彼の前にいると、大人のフリしたベールを剥がされて、子供に戻ってしまうことがあるらしい。

彼は咎めずに、子供が親の質問に正解した時のように頭を撫でてくれた。

「うん、正解、よく出来ました 」

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