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墓守は眠らない

第1章 三日月の章

「まあまあ……そんな怒るなって、霧島ぁ」


 虎太郎にギロリと睨まれて、檜山は慌てて名字に言い換える。


「てか、その話が本当だったら、墓荒らしよりタチが悪いな」

「あ~お前んち、寺だもんな」

「最近、墓荒らしが酷いらしくてさ、親父が夜中様子を見に行けってうるさいんだわ……」


 ふわあああっと虎太郎は再び大きなあくびをする。目付きが悪かったのは十分な睡眠を取ってないせいでもあった。


「マジ!? じゃあカーセックス見放題じゃん!?」

「お前の頭の中は煩悩だらけか」

「なあ、今夜も行くのか? 俺もついて行っていい?」

「檜山が行くなら、俺は寝る」


 しかしそんなわけにはいかないのであった。
 夜十時頃、寺の敷地内にある霧島家を訪れたのは檜山だけじゃなかった。


「こんばんは、霧島くん」


 爽やかに挨拶をしてきたのは、同じクラスの杜若 鈴音(かきつばた すずね)だった。
彼女は長い黒髪をひとつに結んで、巫女装束を身に纏っていた。


「墓荒らしのこと、私も気になっていてね。先日、友達の家のお墓も荒らされたらしいの。だから犯人を捕まえたいと思って」



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