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墓守は眠らない

第1章 三日月の章

 夜空を見上げると、丸くて大きな月がハッキリとその存在を示していた。


「月明かりだけで十分か」


 目線を下げると、すぐ目の前に着物を羽織ったおかっぱ頭の女の子が立っていた。


「!」

「おぬし、わらわの万華鏡は知らぬか?」

「万華鏡?」


 聞き返してから、しまったと思った。
 なんの気配もなく現れた少女は、もしかしたらこの世の者ではないかもしれない。


「万華鏡じゃ。こう、筒のようなもので、覗くとキラキラしてるのじゃ」


 それはわかる。
 うっかり聞き返してしまったがために、少女を無視することができなくなってしまった。


「知っておるのか? 知らぬのか?」


 おかっぱ頭の少女は虎太郎をジッと見つめている。


「霧島くん、その子誰?」


 鈴音の気配に気づいて振り返ると、少女は万華鏡のことを鈴音にも尋ねた。


「わらわの万華鏡を一緒に探して欲しい」

「万華鏡? いいわよ。お姉ちゃんと一緒に探そうね」


 鈴音はあっさりと承諾する。
 そして少女と手を繋ぎ歩き始めた。


「おい、マジかよ……」


 場所が場所なだけに、幽霊に遭遇することはよくある。たまに話しかけられたりするが、そこで反応してはいけないのだ。幼い頃の自分はそれで何度か危ない目に合っているのだから。


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