テキストサイズ

墓守は眠らない

第1章 三日月の章

 ポケットから懐中電灯を出して、鈴音の背中を照らしてみる。そしてゆっくりと横に移動させれば──。


(やっぱりか)


 懐中電灯の光は誰も照らしてはいなかった。鈴音は一人で喋っている。


(何が目的だ?)


 純粋に万華鏡を探して欲しいわけじゃないだろう。そうやって霊は、視える人間を探しては騙して身体を乗っ取ろうとする。


(いざとなったら真言唱えて──いや待て。面倒は見なくていいって、あいつ言ってたよな)


 鈴音の自信たっぷりな顔を思い出して、再びイラッとする。


(……知らね。俺は墓荒らしを探すか)


 そう思って踵を返すと、ザッザッと土を掘るような音が聞こえてきた。


(墓荒らし──!?)


 虎太郎はすぐに辺りを懐中電灯で照らす。
 しかし音は聞こえるものの、その姿は見えない。


「くそっ、どこだ!?」


 暗闇の墓地を走りながら、今日こそ絶対捕まえてやる!と虎太郎は思った。




ストーリーメニュー

TOPTOPへ