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デーモンハント

第3章 契約

不安の中、エルザが震えていると、奥から母親のライザが顔を出す。

「どうしたのエルザ?顔色が悪いわよ?」

声を掛けられ、エルザはライザの顔を見る。
ライザは心配そうにエルザに近付くと、エルザの額に触った。

「やだ、エルザ、熱があるじゃない!部屋に行って休みなさい」

ライザに言われ、エルザは自分の額に手を当てる。
自分ではよく分からなかったが、母親が言うのなら間違いは無いだろう。

(震えも不安も熱のせいかしら)

そう思いながら、エルザは頷き、店の奥に向かう。
店の二階が居住スペースになっているため、厨房の奥にある階段で二階へと上がった。

自室に戻ったエルザは、ベッドに横になると、毛布を被って目を閉じる。
余程体が疲れていたのか、すぐにエルザは眠りに落ちた。



そして、エルザが次に目を覚ましたのは、窓の外が暗くなった頃だった。

(アタシどれだけ寝ていたのかしら?)

体を起こすと、膝の上にぽとりと畳んだ布が落ちる。
布は湿っており、額に置かれていたらしい。

(ママがやってくれたのね)

エルザは思い、ふっと笑う。
母のおかげか、熱は下がったらしく、体が楽になっていた。
もう震えも無くなっている。

両親の顔が見たくなったエルザは、暗い部屋から出て、リビングに向かう。
しかし、リビングの明かりは消えていて、人の気配が無かった。

「あれ?まだお店にいるのかしら?」

エルザは首を傾げて時計を見る。
時刻は夜の七時を過ぎていた。
店が閉まるのは六時で、後片付けをしていても七時には両親はいつも家に戻っている。

(新作ケーキの試作でもしているのかしら?)

そう思ったエルザが店の方に下りてみると、厨房の明かりが点いているのが見えた。
きっと二人で新作の試作をしているのだろう。
エルザはほっとして、階段を駆け下りる。

「パパ、ママ、新しいケーキ作れそう?」

元気に言って厨房の扉を開いたエルザの体は、凍り付いた。


壁や床に血がつき、両親の無惨な姿がそこにはあった。
父は胸に短剣が刺され、口から血を流している。
母は、腹部が大きく切り裂かれており、内臓が体外に露出していた。

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