テキストサイズ

デーモンハント

第5章 傷

「大丈夫?無理しなくていいんだよ?」

心配そうにエルザが言う。

悪魔に襲われた日、シフォンは心と身体に傷を負った。
外に出ることにも怯え、ソレル意外の男性には近付く事すらできない。

それでも、シフォンなりに立ち直ろうとしているのだろう。
しかし、焦りは禁物だ。
焦った結果、更に心が傷つく可能性だってある。

「うん、無理はしない……でも、私もエルザ達と買い物をしたいの」

真面目なシフォンに真っ直ぐ見つめられ、エルザは頷いた。

「分かった、今日は一緒に出かけましょう」

エルザに言われ、シフォンは頷いて笑顔を見せる。

「じゃあ、早く食べよう!」

シフォンはそう言うと、食事を始めた。
エルザとソレルも椅子に座り、料理を食べ始める。



食事を終えた三人は、買い物のために部屋を出た。
シフォンはエルザの手を握りながら、太陽の眩しさに目を細める。
微かに、シフォンの華奢な手が震えた。

「大丈夫?」

エルザが気にしてシフォンに問いかけると、シフォンは頷く。

「大丈夫、ただ、外ってこんなに騒がしかったんだって思ったの」

シフォンは笑顔を作るが、その笑顔はどこかぎこちない。

「マーケットはもっと騒がしいですよ、大丈夫ですか?」

ソレルが言う。
心配そうなソレルの方を見て、シフォンは頷いた。

「何か有ったら言ってくださいね、すぐに家に引き返しますので」

ソレルが優しく微笑む。

「有難う、ソレルさん」

シフォンは感謝の言葉を伝えて、前を向いた。
エルザはそんなシフォンの横顔を見て、強くて美しい子だと心の中で呟く。
そして三人はマーケットに向けて歩きだした。



マーケットに着いた三人は、露店が並ぶ景色を見て回る。
シフォンは大丈夫だろうかとエルザは様子を注意深く見ていたが、シフォンは楽しそうに売られている花や果物を見ていた。

他人から見たら、シフォンはとても健康な少女に見えるだろう。
しかし、エルザの手を離さないことから、シフォンは恐怖と戦っているに違いない。

手を繋ぐ二人を、ソレルは穏やかな表情で見つめていた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ